日语学习:夏目漱石文学作品赏析《文士の生活》

来源:小语种    发布时间:2012-12-27    小语种辅导视频    评论

  私が巨万の富を蓄えたとか、立派な家を建てたとか、土地家屋を売買して金を儲(もう)けて居るとか、種々な噂(うわさ)が世間にあるようだが、皆嘘(うそ)だ。
  巨万の富を蓄えたなら、第一こんな穢(きたな)い家に入って居はしない。土地家屋などはどんな手続きで買うものか、それさえ知らない。此家だって自分の家では無い。借家である。月々家賃を払って居るのである。世間の噂と云うものは無責任なものだと思う。
  先(ま)ず私の収入から考えて貰(もら)いたい。私にどうして巨万の富の出来よう筈(はず)があるか――と云うと、ではあなたの収入は?と訊(き)かれるかも知れぬが、定収入といっては朝日新聞から貰って居る月給である。月給がいくらか、それは私から云って良いものやら悪いものやら、私にはわからぬ。聞きたければ社の方で聞いて貰いたい。それからあとの収入は著書だ。著書は十五六種あるが、皆印税になって居る。すると又印税は何割だと云うだろうが、私のは外(ほか)の人のより少し高いのだそうだ。これを云って了(しま)っては本屋が困るかも知れぬ。一番売れたのは『吾輩は猫である』で、従来の菊判の本の外(ほか)に此頃縮刷したのが出来て居る。此の両方合せて三十五版、部数は初版が二千部で二版以下は大抵千部である。尤(もっと)も此三十五版と云うのは上巻で、中巻や下巻はもっと版数が少い。幾割の印税を取った処が、著書で金を儲(もう)けて行くと云う事は知れたものである。
  一体書物を書いて売るという事は、私は出来るならしたくないと思う。売るとなると、多少慾が出て来て、評判を良くしたいとか、人気を取りたいとか云う考えが知らず知らずに出て来る。品性が、それから書物の品位が、幾らか卑(いや)しくなり勝ちである。理想的に云えば、自費で出版して、同好者に只(ただ)で頒(わか)つと一番良いのだが、私は貧乏だからそれが出来ぬ。
  衣食住に対する執着は、私だって無い事はない。いい着物を着て、美味(うま)い物を食べて、立派な家に住み度(た)いと思わぬ事は無いが、只(ただ)それが出来ぬから、こんな処で甘んじて居る。
  美服は好きである。敢(あえ)て流行を趁(お)う考も無いし、もう年を取ったからしゃれても仕方が無いと思って居るので、妻の御仕着せを黙って着て居るが、女などがいい着物を着たのを見ると、成程(なるほど)いいと思う。
  食物は酒を飲む人のように淡泊な物は私には食えない。私は濃厚な物がいい。支那料理、西洋料理が結構である。日本料理などは食べたいとは思わぬ。尤(もっと)も此支那料理、西洋料理も或る食通と云う人のように、何屋の何で無くてはならぬと云う程に、味覚が発達しては居ない。幼穉(ようち)な味覚で、油っこい物を好くと云う丈(だけ)である。酒は飲まぬ。日本酒一杯位は美味(うま)いと思うが、二三杯でもう飲めなくなる。
  其の代り菓子は食う。これとても有れば食うと云う位で、態々(わざわざ)買って食いたいと云う程では無い。煎茶(せんちゃ)も美味(うま)いと思って飲むが、自分で茶の湯を立てる事は知らぬ。莨(たばこ)は吸って居る。一事止した事もあったが、莨を吸わぬ事が別に自慢にもならぬと思ったから、又吸い出した。余り吸って舌が荒れたり胃が悪くなったりすれば一寸(ちょっと)止すが、癒(なお)れば又吸う。常に家に居て吸って居るのは朝日である。値段は幾らだか知らぬが、安いのであろうが、妻がこれ許(ばか)り買って置くから、これを飲んで居る。外に出て買う時に限って敷島(しきしま)を吸うのは、十銭銀貨一つ投(ほう)り出せば、釣銭(つりせん)が要(い)らずに便利だからである。朝日よりも美味(うま)いか如何(どう)か、私には解らぬ。
  家に対する趣味は人並に持って居る。此の間も麻布(あざぶ)へ骨董屋(こっとうや)をひやかしに出掛けた帰りに、人の家をひやかして来た。一寸(ちょっと)眼に附く家を軒毎(のきごと)に覗(のぞ)き込んで一々点数を附けて見た。私は家を建てる事が一生の目的でも何でも無いが、やがて金でも出来るなら、家を作って見たいと思って居る。併(しか)し近い将来に出来そうも無いから、如何(どう)云う家を作るか、別に設計をして見た事はない。
  此家は七間ばかりあるが、私は二間使って居るし、子供が六人もあるから狭い。家賃は三十五円である。家主は外(ほか)との釣合があるから四十円だと云って呉(く)れと云って居るが、別に嘘(うそ)を云う事もないと思って、人には正直に三十五円だと云って居る。家主が怒るかも知れぬ。地坪は三百坪あるから、庭は狭い方では無い。然(しか)し植木は皆自分で入れたのだから、こんな庭の附いている家としたら、三十五円や四十円では借りられないだろう。植木屋と云うものは勝手なもので、一度手入れをさせたら、こっちで呼ばないのに、時々若い者を連れて仕事にやって来る。物の一月余りもこちこち其処辺(そこら)をいじって居る事がある。別に断わるのも妙だと思って、何とも云わずに居るが、中々金がかかる。

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